イーサリアムクラシックは、2016年7月に、イーサリアム上の分散型アプリケーションがハッキングを受けた「The DAO 事件」の際、イーサリアムから分岐して誕生したプロジェクトです。
そのため基本的にはイーサリアムと同じで、ビットコインのブロックチェーンの仕組みを応用し、通貨としての機能以外にも様々な取引や契約の自動化を行う Dapps(Decentralized Application = 分散型アプリケーション)構築のプラットフォームとなっています。
The DAO は、イーサリアム上の Dapps(Decentralized Application = 分散型アプリケーション)として開発されたオープンソースのプロジェクトで、自律分散型の投資ファンドです。一般的な投資ファンドとは違い、経営者も管理者も、ファンドマネージャーもいません。DAO(Decentralized Autonomous Organization = 自律分散型組織)という全く新しい形態の、従業員のいない、すべて自動化された組織です。
大まかなしくみとしては、参加者がそれぞれ資金となる DAO トークンを購入し、投票によって投資先を決定します。利益が上がると、保有する DAO トークンに応じて配当が分配されます。基本的な流れは イーサリアムのスマートコントラクト上で The DAO のプログラムによって自動実行されるため、不正のない透明な運営が可能となっています。
2016年5月、この The DAO のコードに脆弱性があることが報告されます。その翌月に実際にこの脆弱性を突いた攻撃が行われ、360万ETH(=当時で約58億円相当)の資金が不正に操作されます。
The DAO の仕組み上、28日間は保留期間として実際の出金が出来ないため、その間、何か出来ることはないか、コミュニティー内で対応が検討されました。協議の結果、イーサリアムのブロックチェーンの記録を、不正が行われる前の時点まで戻す、という対応が行われます。
この処置はハッキング被害者の資金を守る唯一の手段でしたが、「誰も改ざんできない」というブロックチェーンの本質を歪めることにもなり、今も議論の余地があるとされています。思想的な根拠により、この処置には賛同しない開発者たちがいました。彼らにとってはブロックチェーンを「人為的に巻き戻す」行為も不正であり、巻き戻しをしないチェーン(オリジナルのチェーン)を正として、使い続けることにしました。このオリジナルのチェーンがイーサリアムクラシックです。
イーサリアムクラシックはその後も独自に発展を続けています。2017年1月には、分裂以前より存在していたイーサリアムの難易度調整の問題の解消と、リプレイアタック対策を行うアップデートを実施。
2017年12月にもアップデートを行い、イーサリアムクラシックの仮想通貨 ETC に発行上限を設けています。これは以後、価格の上げ要因になると思われます。
2018年4月には、イーサリアムクラシックの開発グループのうちのひとつによって、カリストネットワーク(Callisto)というプロジェクトがスタートしています。カリストはイーサリアムクラシックのリファレンス実装(※理由や目的はさまざまですが、同じ実装のものをもう一つ作ること)という位置づけで、イーサリアムクラシックとはブロックチェーンの相互運用が可能です。独自のセキュリティ改善、クロスチェーン(※異なるブロックチェーン同士をつなぐ技術)によるスケーラビリティの解決などを目指しています。